『考える技術・書く技術』が難しい3つの理由と、挫折しない読む順番
『考える技術・書く技術』は、読み通せた人より途中で手が止まった人のほうが多い本かもしれません。ピラミッド原則という中心の考えはシンプルなのに、読み進めるほど難度が上がる。この記事では、難しさの正体を3つに分け、それぞれへの対処と、挫折しにくい読む順番を示します。
難しさの正体1:本の構成が「後半ほど急峻」
本書は大きく4部(書く技術/考える技術/問題解決の技術/表現の技術)に分かれています。第1部は比較的読みやすい。ところが第2部に入ると、演繹法・帰納法、原因の構造化といった論理学寄りの記述が続き、抽象度が一段上がります。多くの人はここで止まります。
対処は単純で、第2部を最初から順に読まないことです。第1部を読んだら、いったん第2部を飛ばして自分の文章を1本書き直してみる。手を動かしてから戻ると、第2部は「なぜあの手順だったのか」の説明として読めます。
難しさの正体2:例が日本語の報告文と噛み合わない
原著は英語圏の実務文書を前提にしています。訳文の例は、日本語の社内文書とは語順も温度感も違う。「例を読んでも自分の資料が思い浮かばない」という感覚は、理解力ではなく素材のずれから来ています。
対処は、本の例を汎用的に理解しようとしないこと。代わりに、自分が先週書いたメールや報告を1本、手元に出す。本書の手順を、その1本にだけ当てはめる。全部に効く読み方を探すと急に難しくなり、1本に絞ると急に易しくなります。
難しさの正体3:グルーピングを「分類」だと読んでしまう
いちばん多い誤読がここです。MECEやグルーピングを「情報をきれいに仕分けること」だと受け取ると、本書は途端に意味が通らなくなります。
本書が求めているのは分類ではなく、同じ問いに対する答えを並べることです。「なぜこの案なのか」という問いを立てたら、その下に並ぶのは全部「なぜ」への答えでなければならない。そこに1つでも「いくらかかるか」への答えが混ざると、ピラミッドは崩れます。
自分の資料でこれを点検する方法は1つです。根拠を並べたあと、その上に問いを1文で書いてみる。書けなければ、根拠が同じ問いの答えになっていません。
「入門編から読むべきか」への答え
『入門 考える技術・書く技術』(山崎康司)を先に読むという選択肢もあります。日本語の文章を前提に書かれているぶん、正体2のずれは小さい。ただし本書の第2部以降に相当する部分は薄いので、入門編だけで止まると「ピラミッドの形は作れるが、根拠の妥当性を詰められない」状態になりやすい。
現実的な順序は、本書の第1部 → 実際に1本書き直す → 行き詰まったら入門編で日本語の言い回しを補う、です。入門編は代わりではなく、翻訳の橋渡しとして効きます。
挫折しにくい読む順番
1. 第1部(書く技術)を通しで読む
2. 自分の文章を1本、結論→根拠3つの形に直す
3. 直しながら手が止まった箇所だけ、第2部の該当節を引く
4. 第3部(問題解決)は、実際にその作業が必要になるまで保留
5. 第4部(表現)は、資料を作る直前に読む
全部を頭に入れてから使おうとすると難しく、使いながら必要な節だけ引くと読み切れます。本書は通読する本ではなく、引く本として設計されています。
一人だと点検が甘くなるところ
上の3つのうち、3つ目(根拠が同じ問いの答えになっているか)だけは、自分では判定が甘くなります。自分の書いたものは、書いた本人には筋が通って見えるからです。
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