難しい本で挫折するのは、いつも決まった場所だ
一冊目も二冊目も、四十ページあたりで手が止まった。しおりの位置がほとんど同じところで並んでいる。難しい本の挫折は、根気の量ではなく、位置の問題として現れます。
難しい本で挫折するのは、意志が弱いからですか?
違います。挫折の位置は本の中で偏っており、その偏りは本の構造によって決まります。読み手の意志の量では説明がつきません。
同じ人が、ある本は最後まで読み、別の本は四十ページで置きます。意志の量が数日で変わったのではありません。二冊の構造が違うだけです。挫折は事故ではなく、設計された地点で起きています。
挫折はどこで起きるのですか?
三つの地点に集中します。総論から各論へ移る境目、具体例が終わって一般化に入る箇所、そして著者が既出として扱う箇所です。
一つ目は、第一章から第二章へ移る境目です。 第一章は、たいてい全体の見取り図です。読みやすく、面白く書かれます。第二章から各論が始まり、密度が一段上がります。読み手は第一章の速度のまま第二章に入り、速度が合わずに止まります。
二つ目は、具体例が終わって一般化に入る箇所です。 具体例は理解できます。そこから著者は原理を取り出します。取り出す過程が数行に圧縮されるため、結論だけが唐突に見えます。分からなくなったのは一般論の側ではなく、一般論に上がった瞬間です。
三つ目は、著者が「前章で述べたように」「周知のとおり」と書く箇所です。 ここで著者は説明を省きます。省かれた内容を持っていない読み手は、この一行で足場を失います。厄介なのは、その一行が短いことです。短いので、重要な断絶に見えません。
三つに共通するのは、どれも著者にとっては説明の要らない場所だという点です。だから丁寧に書かれません。読み手にとっては、そこが最も難所になります。
自分がどこで挫折しているかは、どうすれば分かりますか?
途中で置いた本を集めて、位置を数値にします。記憶ではなく、実物で確認します。
1. 途中で読むのをやめた本を五冊、机に並べます。 しおりや折り目が残っていればそのまま使います。
2. やめたページ番号を五冊分書き出します。 この時点で理由は考えません。
3. 総ページ数で割って、百分率にします。 「三十八ページでやめた」より「全体の一割でやめた」のほうが比較できます。
4. 五冊の数値を並べます。 多くの場合、一割前後と三割前後のどちらかに寄ります。
5. 寄ったほうの位置を、実際に開いて読みます。 一割前後なら第一章と第二章の境目、三割前後なら具体例から一般化に入る箇所である可能性が高くなります。
この作業は三十分ほどで終わります。終わると、挫折が五冊すべてで同じ構造の場所で起きていたという事実が見えます。本を替えても同じ場所で止まっていたのであれば、次に替えるべきものは本ではありません。
挫折した本は、もう一度読むべきですか?
全部ではありません。読み直す価値があるかどうかは、三つの条件で判定できます。
一つ目は、今もその本を読む理由が残っているかどうかです。 買った時点の理由は、時間が経つと失効します。失効した理由のまま開き直しても、同じ位置で止まります。理由が思い出せない本は、その時点で対象から外してかまいません。
二つ目は、止まった位置が全体の三割より前かどうかです。 三割より手前で止まっている場合、本の主張はまだ出そろっていません。読み直す価値が残っています。逆に七割まで進んで置いた本は、主要な部分を通過している可能性があります。同じ「挫折」でも、残っている中身の量が違います。
三つ目は、その本が他の本から繰り返し参照されているかどうかです。 参照が多い本は、避けても後から戻ってくることになります。先に片づけたほうが、結果として早く済みます。
三つとも当てはまらない本は、棚に戻してかまいません。読まないと決めた本は、失敗の記録ではありません。 五冊のうち二冊を外せば、残りの三冊に使える時間が増えます。
挫折地点が分かれば、読み切れるようになりますか?
なりません。この手順で分かるのは、どこで止まったかまでです。そこに何が書かれていたかは、別の作業になります。
止まった地点には、たいてい省略があります。省略されたものは、本文を何度読んでも本文からは出てきません。書かれていないものを、書かれたものから復元することはできないからです。ここを埋めるには、その省略を既に埋め終えた人が要ります。
先に読み終えた人にとって、その省略部分を渡す負担はごくわずかです。既に払い終えたコストだからです。受け取る側が節約できる時間は、それより桁違いに大きくなります。
挫折した本を一人で三度開き直すより、その本を先に読み解いた人と一度突き合わせるほうが、短い時間で終わります。どこで止まったかの特定までは、一人でできます。そこに何が書かれていたかは、一人では埋まりません。
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