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更新: 2026-08-15

難しい本が読めないのは、読解力の問題ではない

同じページを三度読んで、それでも何の話なのか分からない。目は行の最後まで動いているのに、意味だけが通り過ぎていく。難しい本が読めないとき、多くの人は最初に自分の読解力を疑います。

難しい本が読めないのは、読解力が足りないからですか?

違います。難しい本が読めない原因のほとんどは、読解力ではなく、その本が省略している前提が読み手の側に無いことです。

難しい本ほど、著者は読者を「同じ土俵にいる人」として扱って書きます。土俵そのものの説明は書かれません。書けば冗長になり、想定した読者には不要だからです。前提が一つ欠けているだけで、文章は突然不透明になります。

読解力の不足であれば、どの本でも同じように読めないはずです。ところが実際には、同じ人が別の本はすらすら読みます。読めない本と読める本の差は、能力ではなく、前提の有無にあります。

文字は読めるのに、内容が入ってこないのはなぜですか?

読めなくなる場所は三種類しかなく、そのどれで止まったかを区別しないまま読み返しているからです。種類が違えば対処も違います。同じ読み返し方では、同じ場所で同じように止まります。

一つ目は、語が分からない場合です。 専門語や訳語が、定義なしで出てきます。止まる位置は一点に定まります。この種類は自覚しやすく、対処もはっきりしています。

二つ目は、一文ずつは分かるのに、文と文のつながりが分からない場合です。 著者の頭の中では、前の段落の結論が次の段落の出発点になっています。その接続は地の文に書かれません。読み手には飛躍として見えます。

三つ目は、すべての文が分かるのに、章全体が何の話なのか分からない場合です。 これは抽象度の問題です。具体例の話をしていたはずが、いつのまにか一般論に上がっています。上がった瞬間は、たいてい明示されません。

三つは対処が違います。一つ目は調べれば済みます。二つ目は前の段落に戻ると解けることがあります。三つ目だけは、戻っても解けません。 戻った先も同じ抽象度で書かれているからです。

どこで読めなくなったかを特定するには、何をすればいいですか?

止まった位置を記録します。記憶に頼らず、紙かテキストに残します。以下は道具が要らず、今日そのまま実行できます。

1. 読むのをやめた行のページ番号を書き出します。 この時点では読み返しません。まず記録だけを取ります。

2. その位置が、上の三種類のどれかを判定します。 「語」「つながり」「抽象度」のいずれかを、番号の横に一語で書きます。

3. 十箇所たまるまで続けます。 一箇所ごとに調べにいくと、分布が見えなくなります。判断は後回しにします。

4. 三種類の内訳を数えます。 最も多い種類から対処します。少ない種類は放置してかまいません。

5. 「抽象度」が最多だった場合は、その章の最初と最後の段落だけを続けて読みます。 間は飛ばします。章が何の話なのかは、たいてい両端に書かれています。

実行すると、ほぼ確実に一つのことが起こります。止まった場所が、本の中で偏っています。 難しさは全体に均等に散らばっていません。数箇所に集中しています。読めなかったのは本全体ではなく、その数箇所です。

読み返すとき、やってはいけないことは何ですか?

最初のページから読み直すことです。読めなくなった位置は本の中で偏っているため、頭から読み直すと、読めていた部分に時間を使うことになります。

頭から読み直したくなる理由ははっきりしています。前半を忘れているように感じるからです。ところが実際に薄れているのは、前半の内容ではありません。止まった箇所と前半とのつながりです。 つながりを取り戻すために全体を読み直すのは、かける時間の割に戻りが小さいやり方です。

正しい起点は、止まった箇所の二ページ手前です。段落の途中で止まっている場合は、その段落の先頭まで戻ります。そこから読み直して、止まる位置がずれるかどうかを見ます。同じ位置で止まるなら、原因は直前の段落にはありません。もっと前にあります。

そのときだけ、範囲を広げます。二ページで解けなければ一章、一章で解けなければ前の章。広げる順序を先に決めておくと、全体を読み直すという判断に流れません。 全体の読み直しは、費やす時間が最も大きく、得られる情報が最も少ない選択肢です。

この手順でも見つからないものは、何ですか?

読み違えたまま筋が通ってしまった箇所です。ここだけは、この手順では出てきません。

止まった場所は、止まったという感覚があるから記録できます。ところが誤読は、読み手の中では成立してしまっています。引っかからないので記録されません。読み終えたあとも、読み違えたという事実そのものが残りません。

自分の理解を自分で採点することはできません。 採点には、同じ本を先に読み解いた人の理解と突き合わせる作業が要ります。難しい本が読めないという状態のうち、前半は一人で解けます。後半は一人では解けません。

そこから先を埋めたい本があれば、その本を先に読み解いた人と読む場を用意しています。

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