途中で読むのをやめた本が、本棚に何冊ありますか
しおりが挟まったまま、一年が過ぎた本がある。買ったときは読む気だった。買った理由も覚えている。それでも開かないまま、次の本を買っています。
本を途中で読むのをやめてしまうのは、根気がないからですか?
違います。途中でやめるのは、読み進める負荷が上がったときではなく、読む理由のほうが先に消えたときです。負荷は最初から高いままで、変わっていません。
読み始めた時点では、理由と負荷が釣り合っています。読み進めるうちに、負荷は一定か少し上がります。理由のほうは、静かに消えます。消えた瞬間に手が止まります。本人には、負荷に負けたように見えます。
読む理由は、なぜ途中で消えるのですか?
消え方は三つあります。どれも、読み手の側では自覚されません。
一つ目は、目的が先に達成された場合です。 知りたかったことが第二章に書かれていた。残りは、その主張を支える論証や事例です。目的はもう果たされているので、読み進める理由が実際に無くなっています。 この場合、やめたのは正しい判断です。ところが本人は挫折として記憶します。
二つ目は、目的が更新されなかった場合です。 読み始めたときの目的は、その本を読む前の自分が立てたものです。第三章まで読めば、見えている景色が変わっています。古い目的のまま進むと、本の中身と目的がずれていきます。 ずれた分だけ、読む理由が薄まります。
三つ目は、得られるものが見えなくなった場合です。 章が進むほど記述が細かくなり、あと何ページでどこに着くのかが分からなくなります。終わりが見えない作業は、負荷が同じでも続きません。
三つのうち、やめて正解なのは一つ目だけです。 二つ目と三つ目は、手を打てば戻れます。ところが本人には、三つとも同じ「読めなかった」として記録されます。
やめた本の原因は、どうすれば特定できますか?
実物を並べて数値にします。記憶の中で振り返っても、三つの型は区別できません。
1. 途中でやめた本を、五冊そろえて机に並べます。 電子書籍でも、開いて最終読了位置を確認します。
2. やめたページ番号と、総ページ数を書き出します。 二つの数から百分率を出します。
3. 「なぜこの本を買ったか」を、一冊につき一行だけ書きます。 思い出せない本があれば、その一行の欄は空にしておきます。ここが空であること自体が結果です。
4. その理由が、今日もまだ有効かを「はい/いいえ」で判定します。 迷ったら「いいえ」にします。
5. 「はい」の本だけを残し、残りは棚に戻します。 戻す判断は敗北ではありません。読まないと決めた本を選べたことが成果です。
三十分ほどで終わります。終わると、五冊のうち何冊が「目的は既に果たしていた本」だったかが分かります。その分だけ、本棚は軽くなります。
この作業をすると、ほぼ確実に一つのことが起きます。 やめたページの百分率が、五冊でばらばらにならず、一箇所に寄ります。寄る位置が、その人がいつも読む理由を失う地点です。本を替えても位置が動かなかったのであれば、次に替えるべきものは本ではありません。
似たような本を、また買ってしまうのはなぜですか?
やめた理由を記録していないからです。理由が残っていないので、次に選ぶときも同じ基準で選び、同じ場所で止まります。
本を置いたとき、多くの人は「時間がなかった」と記憶します。この記憶は次に活きません。時間は次も足りないからです。記録すべきは時間ではなく位置です。 何ページで、どういう種類の内容に入ったところで手が止まったのか。ここが残っていれば、次の一冊を選ぶときの基準になります。
もう一つ理由があります。買う行為と読む行為が、別の動機で動いています。 買うときに働いているのは、これから学ぶ自分への期待です。読むときに要るのは、目の前の一章を通過する体力です。二つは別物なので、買う判断だけを繰り返すと在庫が増えます。
打ち手は一つで足ります。新しい本を買う前に、置いた本を一冊選んで、やめたページを開いてみる。 開いた上でなお新しい本を選ぶなら、それは判断です。開かずに買うと、同じ判断の反復になります。
残った本については、何が分からないままですか?
残した本を、そのままもう一度読み始めても、前と同じ位置で止まります。この手順で分かるのは、なぜやめたかまでです。止まった箇所に何が書かれていたかは、分かりません。
そして、もう一つ判定できないことがあります。やめた本の中に、読み違えたまま先へ進めなくなった本が混ざっている場合です。 誤読は本人の中では成立しているので、原因として浮かんできません。理由が消えたように見えて、実際には理解が途中で逸れているだけのことがあります。
この区別だけは、その本を先に読み解いた人と突き合わせると一度で付きます。並べ直す作業は一人でできます。判定は一人ではできません。
途中で置いた本が並んだ本棚は、根気の無さの記録ではありません。読み方と選び方の記録です。 記録として扱えば、次の一冊の選び方が変わります。放置すれば、同じ位置で止まる本が一冊ずつ増えていきます。
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