『エッセンシャル思考』を実践できない理由と、最初に作る「やめることリスト」
実践が続かないのは、意志が弱いからではありません。『エッセンシャル思考』が「本当に大事なことだけに集中せよ」と説いても、では自分の業務で具体的に何を捨てるのかは、読者が自分で決めるしかない。その判断基準を持たないまま本を閉じるから、翌週には元の働き方に戻る。この記事は、その基準を4列の表で作るところまでを、実際に記入した例とそのまま使える空欄テンプレートつきで示します。
なぜ「読んだのに実践できない」のか
本書のメッセージは明快です。ほとんどのことは重要ではなく、ごく少数のことだけが決定的に重要だ——だから後者に資源を集中せよ。ここに異論はありません。つまずくのは、この考え方を自分の1日に落とすときです。理由は3つあります。
ひとつ、「何を捨てるか」の判断基準が本には書かれていない。書けるはずもありません。何が重要かは人と状況で変わるからです。ふたつ、捨てると決めても「断るスキル」が別に要る。上司や同僚の依頼を角を立てずに減らすのは、それ自体が技術です。みっつ、一度やる気が出ても、仕組みがなければ元に戻る。習慣化の設計が抜けている。
この3つのうち、最初の壁——判断基準がない——を越えないと、あとの2つは始まりません。断る対象も、習慣にする内容も、「何を捨てるか」が決まって初めて具体化するからです。だから最初に作るべきは、立派な計画表ではなく、1枚の「やめることリスト」です。
判断基準を4列の表で作る
難しく考える必要はありません。いま抱えている仕事を書き出し、次の4列で1行ずつ評価します。
列1「やること」——いま時間を使っている業務を具体的に。列2「成果への貢献」——それが本当に大事な成果にどれだけ効くか、高・中・低の3段階。列3「やめた場合の損失」——やめたら何がどれだけ困るか、大・小の2段階。列4「判断」——続ける・簡略化・やめる、のどれか。この4列を埋めるだけで、感覚で抱えていた仕事が、捨てられるものと守るべきものに分かれます。
実際に記入した例
抽象論だけでは動けないので、この記事の書き手が自分の事業運営で実際に埋めた中身を載せます。判断理由まで書くのがコツです。理由が書けない行は、まだ評価しきれていない証拠だからです。
実際に埋めた5行はこうなりました。
・検索表示のある既存記事を改善する → 貢献: 高/損失: 大/判断: 続ける(訪問の増加に直接つながる)
・書籍ページをさらに増やす → 貢献: 低/損失: 小/判断: やめる(いまの課題はページ数ではない)
・トップページを大幅に作り直す → 貢献: 低/損失: 小/判断: やめる(検索流入も講座希望も直接は動かさない)
・記事から該当書籍ページへ直接つなぐ → 貢献: 高/損失: 大/判断: 続ける(講座希望までの経路そのものになる)
・過去記事を一度に全部書き直す → 貢献: 中/損失: 小/判断: 後回し(いま最優先の指標への影響が小さい)
この5行を決めた瞬間に、その週にやることが「既存記事の改善」と「書籍ページへの導線」の2つに絞れました。増やす・作り直す・一気に直す、は全部「いまはやらない」に落ちた。捨てる決定のほうが、残す決定より多いのが健全です。
そのまま使える空欄テンプレート
自分で埋めるときは、各行にこの5項目を書きます。
・やること(いま時間を使っている業務を具体的に)
・成果への貢献(高・中・低)
・やめた場合の損失(大・小)
・判断(続ける・簡略化・やめる)
・判断理由(なぜそう決めたか)
5〜7行で十分です。多すぎると評価が雑になります。
迷った行を決める3つの問い
「続ける」と「やめる」で手が止まる行が必ず出ます。そのときは、この3つを自分に問います。
1. これをやめたら、半年後に本当に困るか。困る具体的な場面を1つ挙げられなければ、たぶんやめられる。
2. これは「大事」なのか、それとも「やり慣れていて楽」なだけなのか。後者は貢献「低」に落ちる。
3. これに使っている時間を、貢献「高」の行に移したら何が起きるか。移した先の伸びが想像できるなら、答えは出ている。
この3問は、本書の「トレードオフを直視する」という核心を、1行単位の意思決定に落としたものです。捨てることの不安は消えませんが、不安を抱えたまま決められるようになります。
一人で決めきれないときは
判断基準は、他人の視点が入ると精度が上がります。特に「これは大事か、楽なだけか」の切り分けは、自分一人だと甘くなりがちです。
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dokkai